音楽業界時代、いろいろな制作会社やクリエイター、ミュージシャンらと仕事をしてきたが、我々の業界では「絶対に言ってはいけない一言」というものがあった。
「他にもいろいろ忙しいんで」
それが、「他の仕事もあるんで」「他の案件もあるんで」といったもの。
つまり、「俺はおたくとの案件(仕事)だけじゃないんだ」ということを意味する言葉。
以前務めていた会社の上司にも、「この言葉だけは絶対に口にするな」と何度も言われていた。
なぜこれが、言ってはいけない一言なのか。
あまりにも常識だから
仕事をしている人は誰しも、さまざまな案件を抱えて仕事をしている。
AをBにする仕事だけでなく、Cを維持する仕事、Dへの教育、Eの報告書、Fへの交渉、また、それらに付随する準備からなにから、仕事は誰でも複数抱えており、幾重にも連鎖している。
さらにもっと言えば、その人にも人生があって、家庭があって、プライベートもあって、体調もあって、気がかりなことは生きてる以上誰にでもある。
つまり、「他の仕事もあるんだ」というのは、ビジネスの上であまりにも常識だからである。
つまりこれは、遅刻したときに「朝起きれなくて」と真顔で陳情しているのと同じである。
当たり前だ、お前が朝起きれなかったから遅刻したんだろう、という。
30を過ぎても
比較的これを口にしてしまう人は若い人に多い。
私は、「なにがあっても、これだけは口にするな」と、繰り返し言われていたので肝に銘じていたが、当時、ある取引先で、この言葉を口にした若者がいた。
当時私が20代、その男は私より1つか2つ下の、誰もが知ってる有名企業で、私(の会社)がそこから仕事をもらっているような状態だった。
つまり年齢的には向こうのほうが下だが、立場的には向こうのほうが上。
彼は一流企業に転職し、次から次へと来る零細企業の対応に追われ、思わず口にしてしまったんだろう。
その彼は約一年後、無断欠勤が続きそのまま退社した。
やっぱりこの言葉を発してしまう人は、ダメなやつなんだなと、当時20代だった私は思った。
しかし30過ぎてもこの言葉を口にする人は稀にいる。
環境か人か
この言葉を聞くと、「いつかこいつは必ず飛ぶな」と私は予見して付き合うようにする。
この言葉を人に発する経緯というのは、その人を取り巻く環境が悪いのかもしれない。その会社が悪いのかもしれない。
またはその人の考え方が甘いだけなのかもしれない。
そこまで全てを察することはできないが、この言葉が出てきたら、付き合い方を考えたほうがいい。
逆に、この言葉のニュアンスが全く出てこない相手であれば、どれだけ嫌な相手でも仕事は続ける。
好き嫌いは自分の一個人の主観であり、仕事ができるできないは関係ない。
仕事ができない相手なら、どれだけいい人でも仕事の関係は続けられないし、どれだけ嫌な奴でも、仕事ができる相手なら、嫌いという好みで切っていたら自分は一生成長しない。
ビジネス書にでてくる言葉
「おたくとの案件だけじゃないんで」という一言が破滅の呪文だとすれば、「忙しい」という言葉は破滅に向かう第一歩だ。
よくビジネス書に書かれているが、できる人ほど暇なフリをするという。
つまり、どれだけ忙しくても、それを周りには一切見せず、暇に見せる。
確かに、日夜忙しそうな人には連絡しにくい。
なので暇に見せることで、連絡しやすい印象を始終周りに与え、案件を受注する接点機会を徹底的に増やすのだと言う。
確かに、仕事ができる人ほどレスが早い。
レスが遅いと「忙しそう」「そんな中連絡して悪いことしたな」という印象を与えてしまうからだ。
もちろん、できる人ほど取捨選択の判断は早い。
あまりにも信頼の低い相手には、どれだけレスが早い人でも、後回しにするだろう。
例えば、破滅の呪文を唱えるような相手には。