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フジロック2018「なにが凄いの?」ボブディランを初めて見た人の疑問に全て答えます

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平成最後の夏に、ボブ・ディランがフジロックに降臨しました。

この記事を事前に見て頂いていた方を除けば、

sagitani-m.hatenablog.com

フジロックで初めてボブディランを見て、退屈・困惑・退場してしまった方も多いようです。

ググってもあんまり情報出てこないし、結局あれはなんだったのかと疑問だけが残る。

以下に「初めてボブ・ディランを見た人が生じる疑問」に対する回答を全て置いておきますので、あなたのモヤモヤの解決になれば幸いです。 

なんの曲をやったの?

フジロック2018ボブ・ディランのセットリストがこちらです。

【Bob Dylan 2018/7/29 Fuji Rock Festival 2018 Setlist】
1 Things Have Changed (Bob on Piano) /シングス・ハヴ・チェンジド (『Wonder Boys"(OST)』 2001)
2 It Ain't Me, Babe/悲しきベイブ(『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』1964)
3 Highway 61 Revisited/追憶のハイウェイ61 (『追憶のハイウェイ61』 1965)
4 Simple Twist Of Fate/運命のひとひねり (『血の轍』1975)
5 Duquesne Whistle/デューケイン・ホイッスル (『テンペスト』 2012)
6 When I Paint My Masterpiece/マスターピース (『グレイテスト・ヒッツ第2集』 1971)
7 Honest With Me/オネスト・ウイズ・ミー (『ラヴ・アンド・セフト』 2001)
8 Tryin' To Get To Heaven/トライン・トゥ・ゲット・トゥ・ヘヴン (『タイム・アウト・オブ・ マインド』 1997)
9 Don't Think Twice, It's All Right/くよくよするなよ (『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』 1963)
10 Thunder On The Mountain/サンダー・オン・ザ・マウンテン (『モダン・タイムズ』 2005)
11 Make You Feel My Love/メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ (『タイム・アウト・オブ・ マインド』 1997)
12 Early Roman Kings/アーリー・ローマン・キングズ (『テンペスト』 2012)
13 Desolation Row/廃墟の街 (『追憶のハイウェイ61』 1965)
14 Love Sick/ラヴ・シック (『タイム・アウト・オブ・ マインド』 1997)
15 Ballad Of A Thin Man/やせっぽちのバラッド (『追憶のハイウェイ61』 1965)
16 Blowin' In The Wind/風に吹かれて (『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』 1963)

これ、相当いいです。

ここまでサービス精神満点のセットリストはそうないです。

多くの人が知るボブ・ディランは1960年代~70年代ですが、当然ディランはずっと新譜をリリースし続けています。2000年代も2010年代も。

なので来日ライブでは新譜からの選曲も多かったりしますが、今回はフェスということもあって、新旧織り交ぜた名曲集のセットリストになっています。

正直、うらやましいです。

というか、悔しい。

そう言われると「予習してから見に行けば良かった」と思うかとしれませんが、大丈夫です。

どれだけ予習しても往年のファンでもわかりません。すぐには。

「なんの曲か当てる心の早押し大会になってた」

という人が多いですが、ディランのLIVEは毎回そうです。

なんで原曲とアレンジ変えるの?

これはデビュー当時からからそうです。そういう仕様です。 

 初来日した武道館LIVEのCDを聴いてもわかると思います。

「原曲の感じが好きなのに」

と思うかもしれませんが、原曲がギター一本の素朴な歌なのに対し、LIVEではものすごい激しいロックンロールに変わったりして、それがめちゃくちゃカッコよかったりもするので、ディランの歌はCD音源がベストだとは一概には言えません。 

 特に70年代のディランはどんな曲を演奏しても抜群でした。

声も衣装もカッコよく、年齢的にも30代半ばで、油が乗り切っていた時代でした。

この1975年のブートレグは、LIVE盤としては一番オススメです。

ローリング・ストーンズとの違い

ローリング・ストーンズの大ファンである人が言ってたんですが

「ストーンズは60、70になっても20代のまんまの演奏、歌い方でさ、衣装まで同じなんだから見ててちょっと恥ずかしいよ(笑)。ディランは年相応のスタイルでやるから、それがかっこいいんだよな」

アーティストによるとは思いますが、ディランは、そのときに自分がベストだと思う形で演奏する人なんです。

世界に中指を立て続けてきた

とはいえ、CDと同じ状態で聴きたいと思ってる人の需要があることくらい、本人も分かっているとは思います。

しかし、世界中からフォークの神様と祭り上げられても、フォークを捨てエレキギターに持ち替えて、大ブーイングの中でも平気でロックを鳴らす人なので、こちらの意向は届きません。

世界にも歴史にも中指を立て続けてノーベル文学賞とってしまうような人に、「CDみたいに歌って」といっても無駄です。

この人を一般的な商業アーティストと比較して同一線上で語るのは、すごく難しいんです。

なんでギター持たないの?

その昔フォークの神様と称されたボブ・ディランがずっとピアノって、なに、

ピアノマンなの?ビリー・ジョエルなの?

と思ったかもしれませんが、ディランはここ10数年、LIVEでギターを持ちません。

基本、ピアノのみです。

もう御年77歳。握力もなくなってきてるようで、あまりギターを弾かないそうです。

稀に持つこともあるようですが、見れた人は相当ラッキーです。

なんで検索しても情報出てこないの?

当日、ツイート検索した人や、ググった人もいると思いますが、ボブ・ディランの情報がそんなに出てこないのは、往年のファンはTwitterやらない世代だからです。

ディランのリアルタイムファンは70歳前後です。

2ch(5ch)もやらないし、ブロガーになってアフィリで稼ぐぜ!みたいな人もいません。

私が思うに、国内最大のボブ・ディランファンサイトはここです。 

howtofollowbobdylan.com

ディランのことが知りたければ、このサイトを見ないとダメです。

もう20年以上前からひたすらボブ・ディランを追いかけ、そうした人たちが集まるサイトです。

ご覧頂くとわかると思いますが、SEO対策したりしてるようなサイトではありません。

スマホだと見にくいかもしれませんが、ディランのスタイルと同様、そんなことは知ったことではありません

なんで最後は仁王立なの?

言葉を発するわけでもなく、一礼するわけでもなく、手を振るわけでもキレイに整列するわけでもなく、出演者一同、横一列に適当に立って、「なに?なんか始まるの?」と思ったら暗転して終わります。

私が過去行ったLIVEでも全部そうでした。

演出とも言えない、この一瞬の出来事でここまで強烈なインパクトを残せるのは、ボブ・ディランの他いないと思います。

これはディランなりのファンサービスなんだと思います。

以上、俺でした。

という、見に来てくれた人への返礼であると思いますが、ディランは滅多にインタビューにも答えないので、真意は誰にも分かりません。

ディラン楽しそうだったよ

YouTubeで多くの映像を確認しましたが、確かに笑顔が多く、本当に楽しそうに演奏していますね。

ますます行った人たちが羨ましくて悔しいです。

基本的に、歌う時もほとんど感情を出さず、無愛想に無表情で歌う人なので、ここまでノリノリで楽しそうに演奏をすることは稀です。

相当いろんなコンディションが良かったんだと思います。

気候、体調、音。

また、ディランは客の反応が良いと嬉しそうに演奏します。これはどんなアーティストでもそうだと思いますが、ディランもまた、1パフォーマーです。

お客さんの反応がいいと、乗ってきます。

映像を見ていると、オーディエンスの反応が良いので、ディランも楽しかったんではないでしょうか。

結局この人のなにがすごいの? 

音楽を楽しむ、聴く、という通常の概念でディランに臨むと、ただただ退屈に感じます

それはこの記事でもお話した通りです。

sagitani-m.hatenablog.com

ボブ・ディランは音楽マーケットの中に存在する一人ではありますが、既存のミュージシャンと同一線上で語ることはできません。

簡単にいうと、あなたが好きな音楽、あなたが好きな歌、それらは全て、ボブ・ディラン、ビートルズ、ローリング・ストーンズのどれかに必ずたどり着きます

今の音楽シーンを構築しては破壊してきた創造主だと思ってください。

現世での存在感としては、アインシュタインとかエジソンとか、そういう人と同じになりました。歴史上の偉人。

つまり、死ななかったジョン・レノンであり、ジョン・レノンが後期もっとも影響を受けたのが、ボブ・ディランその人でした。


ボブディラン「風に吹かれて」の前に抑えておくべき名盤 / BobDylan blowin in the wind