平成の30冊で20位にランクインしていたこの作品。
テーマは天皇の戦争責任
平成の時代が終わるというこのタイミング、平成の30冊に選ばれたということもあり、また、先日ドラマ『二つの祖国』を見たタイミングということもあり
本書を手にとって見た。
主人公の母親は東京裁判の元通訳士であり、『二つの祖国』の小栗旬の役柄と同じなので、最初は読みやすいかなと思ったんだけど…
複雑怪奇な描写
アメリカの学校に留学している16歳の女子高生マリが、学校の課題として、天皇の戦争責任をテーマにしたディベートをおこなうことになったため、改めて日本のことを知ろうとし…、というプロットはすごくいいと思うんだけど、そのままではダメだったか。
なぜか途中からこの主人公はイタコみたいになって死者と会話?できるようになったりするあたりがどうにもよくわからず、ついていけなかったので、ディベートのシーンしか印象には残っていないんだけど、この手法が文芸界では評価されたようだ。
天皇とキリストとフィクション
天皇の存在を責め立ててくるアメリカに対して、キリストの存在を引き合いに出すマリの孤軍奮闘ぶりは、読んでいてとても考えさせられる。
アメリカでもう一度東京裁判をやっているかのような校内ディベートは、真珠湾攻撃の反則行為や、南京大虐殺、731部隊の話にまで及ぶ。
こういったテーマだからこそ、どこかにフィクション世界を盛り込まないと描けなかったのかもしれない。
精霊?との対話以外にも、時代も過去と現代を行き来する展開なので、決して読みやすい作りではないと感じる。
映像向きの小説
こういった作品こそ、映像に向いていると思う。この小説はどこか映像の脚本のようでもある。
ただ映像化は、技法的なところではなく、いろんな諸問題があって難しいでしょうな…
ただそれくらい、タブー視されているような部分を突いてくる作品だった。