鷺谷政明の埼玉県外

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「音楽の日2019」長渕剛の乾杯を徹底解説

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桑田佳祐さんができることは長渕剛さんにはできない。でも、長渕剛さんができることは桑田佳祐さんにはできない。

お互いそれぞれ自分にしかできないフィールドで戦ってる。突き抜ける人はみんなそうだ。

音楽の日『乾杯』合唱

TBS「音楽の日2019」披露された長渕剛さんによる『乾杯』。

全国各地の総勢約300人の学生たちと共に合唱。

中継場所は、岩手県釜石市の釜石鵜住居復興スタジアム、長崎県の五島列島、富山県五箇山、瀬戸内海のビーチ、そしてTBS赤坂スタジオでの5カ所同時の大合唱。

『乾杯』のルーツ

1980年に発表

もともとこの歌は、長渕さんの地元の友人が結婚するにあたって作られたもの。

デビューが1979年なので、デビューしてまもない1980年3枚目のアルバム『乾杯』に収録されている。

1988年verが大ヒット

この『乾杯』は、1988年『NEVER CHANGE』製作時に再レコーディングされ、シングルカットされた。このときのバージョンが世に広く認知されているバージョン。

カラオケでよく歌われるのもこれ。

アルバムの一曲に過ぎなかった

ここで一つの気づきは、どんなスターでもどんなプロデューサーでも、「これは売れる!」と思って狙って当てられる人はまずいない。

毎日をひたむきに生きてきた人に、こういった偶発的なヒットを生む。

『世界に一つだけの花』も、最初はアルバムの一曲にすぎなかったが、その後、平成を代表する名曲となっていった。

時代に見出されたのだ。

人気があるのは実は初期ver

『乾杯』は大きくわけて1980年と1988年の2つのバージョンがあるわけだが、コアなファンからはやはり初期バージョンの人気が高い。

初期verは、ピアノと歌のみのシンプルな構成。

この音源を聴くとわかるが、まあ歌が旨い。

よくモノマネされるように、今でこそかなり癖の強い歌い方で認知されているが、元々はとんでもなく歌がうまい人だということを忘れてはならない。

そのベースがあったからこそ独自の表現を突き詰めていったわけで、個人的には、長渕剛さんの音楽的表現力が完成形に至ったのはアルバム『Captain of the Ship』だと思う。

歌声というところでは、この時代以降の長渕さんの歌はあまり好きではないんだけど、一人のアーティストとしてはやはり好きな存在であることには違いなく、この『音楽の日2019』も楽しみに見た。

音楽の日2019レビュー

レイチャールズ的アドリブ

合唱ということでいつもの長渕節は少々抑えた歌い方だったが、特に良かったのは後半。

合唱をベースに、先に歌詞を読み上げるように歌うあの入り方。あれはまるで『We are the wrold』 におけるレイ・チャールズのよう。

こういった所業ができるのも、ベースに圧倒的なリズム感と音程があってこそ。

リズムが合わなかった歌い出し

ただ、冒頭は珍しくリズムが走っていた。

ピアノのみの演奏とはいえ、長渕剛さんがあそこまで走ってしまうことは珍しい。

おそらくモニター環境であると思うけど、ここでもう一つの気づきは、ほとんどの人はモニター環境が悪いと耳に手をやってしまう

「あれ?あれ?」というアピールも含めて。

見ている人にはそれは伝わる。ああ、モニター環境が悪いから少しリズムが取れてないのかな、と。

ただ、エンターテイナーとしてはそれはやったら失格。ましてや生放送で5箇所中継。あれ?あれ?感なんか出ようもんなら雰囲気が台無し

あくまでそんな素振りを見せず冷静にリズムを修正していくあたりは、さすが男一匹鹿児島から花の都大東京に乗り込んできて成功を収めたこの道40年の大ベテランといったところ。

『乾杯』は応援歌となった

2011年松島基地での乾杯

そして改めて痛感するのは、この曲は、結婚する友人に宛てられたものでありながら、人生の応援歌へと昇華しているということ。

それが決定的に証明されたのは、2011年、松島基地で航空自衛隊員の前でこの歌を歌ったときだった。

男同士で肩を組んで歌う『乾杯』。いやこれ、結婚の歌なんだけどという思いは一掃され、みんなで頑張ろうという応援歌と化していた。

『乾杯』の歌詞

もう一度歌詞をよく見ると、「キャンドルライト」というワードに関してはさすがに結婚式感が強いが、そのあと、「明日の光を身体に浴びて」、と出てくる。

つまり、キャンドルライトも一つの人生のスポットライトのようなものであり、そう考えると、結婚式でのみしか使えない曲とも思えない。

そう、乾杯とは、壮大な人生の応援歌であった。

ミスマッチなコラボ

また、中学生らとのコラボというのも良かった。このミスマッチ感が。

長渕剛さんは感覚的にそれを把握されているのか、ドラマ作品では必ず無垢な少年を横に置く。

簡単にいえばヤ◯ザと少年といったような。こういったミスマッチ感を長渕剛さんはよく使う。

長渕剛さんとは絶対に合わないものを、これからも組み合わせてほしい。

桑田佳祐さんとはどこかで通ずるところがあったから組み合わなかったが、今やそれぞれ自分のフィールドを作った二人なので、 そろそろ長渕剛さんの『勝手にシンドバッド』、桑田佳祐さんによる『乾杯』も聴いてみたい。