いつからだろうか。歌を聴いて感動しなくなったのは。
いまさら歌で感動しない
10代の頃は、聴けばすぐに「かっこいい!」と感じる歌がたくさんあった。
それはやはり、聴いた音楽の総量が少なかったからだろうか。感動のハードルが低かったのだろうか。
どこへ行っても、どこへ出かけても楽しい幼少期。それでも慣れてくれば、一度行ったことがある場所なら、行っても感動は少々薄れる。
それは、「なにが起こるか」を知っているからだ。
そこへ行って、自分がどんな感情になるかを覚えているからだ。
やはり歌も聴きすぎると、だんだんと感動しなくなるのだろうか。
新曲を聴いて感動するということ
AIひばりの新曲「あれから」をNHKスペシャルで聴いた。
号泣した。
でも、なぜ感動したんだろう。
美空ひばりさんが甦ったような気がしたから?
最新のAI技術の凄さに感動したから?
それとも、美空ひばりさんを愛する人たちの思いを感じたから?
2回、3回聴くともうわからなくなる。どれもあてはまるような気がしてくる。
ただ1回目を聴いたときの感覚ははっきりと残っている。
「いい曲…」
と思った。
まっさきに音源をダウンロードしたくなった。もう売ってるのかな、と。
そこで自分に驚いた。
なんだ。まだ新しい歌を聴いて感動できる心は残っていたじゃないか。
「あれから」発売日は?
というわけで、「あれから」がどこかで買えるのか調べてみたが、現在はまだリリースの予定はない模様。でも必ず発売はされると思う。
理由と、予測は後述する。
「あれから」はなぜ感動するのか
歌詞
「あれから」は、歌詞がいいと思った。
美空ひばりさんは活動休止をしていて、今、活動再開したとしたと考えれば、ぴったりの歌詞だ。
歌声
その歌詞を表現する歌声。
歌声は100%再現できていると言っていいような気がする。
特に
今でも昔の歌「を」
振り向けば幸せな時代でした「ね」
この語尾。
完全に美空ひばり。もう呼び捨てにしよう。完全にひばり。
さすがYAMAHA。初音ミクを生み出したボーカロイドの先駆者なだけある。すごい。
曲
いわゆる昭和歌謡ではあるのに、どこか今っぽさが感じられる曲調が良い。
使用している楽器、それからAメロなどに入る少し多めの符割りが、そのあたりを醸し出していたのかもしれない。
映像
映像はまだまだAI感が強かった。人間のそれとはまだ思えない。
少し引いたアングルで見れば美空ひばりさんに見えなくもないけど、寄りで見るとやはり映像感は強い。いや、映像感は強くてもいいんだけど、表情もまだまだ固く、改良の余地はあるように感じた。
ただ今回のテーマは映像ではなくあくまで歌声なので、いいとして、それでも歌声の完成度があまりに高いため、AI感が強い美空ひばりさんであっても十分引き込まれた。
美空ひばりという歌手
そもそも僕は美空ひばりさん世代ではないし、ロックを聴いてきてるので、特別強いファンというわけでもなければ思い入れもない。
でもいい歌だなあと思った。小学生の頃ブルーハーツの『リンダリンダ』を聴いたときのような。全くジャンルも違うのに。
でも同じような感動だった。
やはりこれは、美空ひばりという一人の表現者による力なんだと思う。
そして、美空ひばりさんと同様、聴いた瞬間「あ!いい歌!」と思える新曲を未だにリリースし続けているアーティストが、僕にはもう一人いる。
それが、宇多田ヒカルだ。
良い悪い古い新しい
新しければ良いわけではない。温故知新が良いとも思わない。
でも昔の歌が好きだ。けど新鮮味はない。慣れてしまった自分に刺激が欲しい。
だけども、年はとった。
そんな大人たちに、感動を提供できるミュージシャンは少ない。
誰でも歌い手になれる時代になった。誰もが発信できる時代になった。
美空ひばりさんより再生されている歌い手はYouTubeに山程いる。
それでも、大人に感動を提供できるミュージシャンはごくわずかだ。
この違いはなぜか。人は歌の何に感動するのか。
AIが、科学が、そこに迫った瞬間でもあった。
人を生き返らせる是非
今後技術の発展で、誰でも人を生き返らせることができるようになるかもしれない。
AIひばりのように、または、VR空間内に。
そうすると、いよいよ現実との境目がなくなってくる。死んだ人をずっと思い続けてしまう。現在を生きられなくなる。
そう考えれば、人を生き返らせるという行為が100%正しいと断言するのは早計かもしれない。
でも僕はこう思う。
いつの時代も、技術を発展させてきたのは戦争だ。
いかに確実に人を殺すかという叡智の結集が、あらゆる技術を発展させてきた。
今回は、死んだ人を生き返らせることに、あらゆる叡智が結集し、また日本の技術が一つ前進した。
人を殺すための技術革新と、人を生き返らせるための技術革新。
ここが違うなと。
NHK紅白歌合戦出場なるか
僕ならこう考える。
令和元年の紅白のトリに美空ひばり出場。
新曲「あれから」。
翌日よりダウンロード販売開始。
1月中旬よりCD発売。
ただ、先に挙げた、人を生き返らせる是非といったことも考えると、トリだと賛否が出そうだ。普通に紅組から出場するというのがちょっとまずい。
ならば、スペシャルプログラム的な参加ならどうだろう。余興的な枠で。
日本は今、これだけ技術が進んでいるんですよ、というPRの意味でも、令和元年っぽくて良い。来年はオリンピックだし。
情報が更新され次第、また。