夏目漱石『坊っちゃん』の簡単な感想を。
基本ずっと怒ってる
これだけ最初から最後までずっと怒ってる小説というのも爽快だ。
もちろん、これが江戸っ子べらんめえ気質から来る愛情もあるのだろうが、文体がずっと怒り口調で、読んでてどんどん引きずり込まれる。
冒頭、幼少期から大人になっていくその流れは、圧巻の勢いで主人公の人物像に取り込まれる。
この主人公はどこか両津勘吉的な感じだろうか。
口は悪く不器用だが、正義感が強く、情に厚い。
夏目漱石は一気に書いた
これだけのテンションをどのように保って書いたのかと気になったが、巻末に入っていた江藤淳さんの解説によると、10日くらいでこれを書き上げたのではないかという推察もある。
驚異的なスピードだが、確かにもう一気に書いてしまわないと、こういう作品にはんらないと思われる。
坊っちゃん名言
主人公のキャラクターが明瞭なので、ぶっ飛んだことを言う半面、ものすごく響く言葉も多い。
金や威力や理屈で人間の心が買えるものなら、高利貸しでも巡査でも大学教授でも一番人に好かれなくてはならない。中学の教頭位な論法でおれの心がどう動くものか。人間は好き嫌いで働くものだ。論法で働くものじゃない
考えてみると世間の大部分の人は悪くなることを奨励しているように思う。悪くならなければ社会に成功はしないものと信じているらしい。たまに正直な純粋な人を見ると、坊っちゃんだの小僧だのと難癖をつけて軽蔑する。
夏目漱石はこの作品を通して、社会へのアンチテーゼを投げかけたかったのか。
いずれも、現代にまで通ずる名言だ。
フジテレビのドラマ
2016年の正月に放送された、二宮和也版のドラマも非常に良かった。
この人は立川談春さんの『赤めだか』でも見事に談春役を演じた人だし、このドラマ、キャストが豪華。
二宮和也、松下奈緒、佐藤浩市、小林薫、浅野ゆう子、岸部一徳、古田新太、八嶋智人、山本耕史、及川光博、そして、清役は宮本信子さん。
すごい布陣。