「コンビニ人間 / 村田沙耶香」感想・書評 実写映画化するなら主演は誰か

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やっぱり芥川賞受賞作品は一通り見ておいたほうがいいんだろうなと思った。

『コンビニ人間』はとんでもない作品だった。

(以下ネタバレを含みます)

 「コンビニ人間」をどう評価するか

「それをどう評価するかで、その人のセンスが測れる」

といった作品はいくつかあるけど、この小説はもはやその次元にもないように思う。

読んだ時の年齢、環境、心境、状況で変わってくるだろうし、性別も大きく関係してくるだろう。

変人の爆笑奇譚である

古倉恵子という一人の変人の話だ、と結論づけてしまえば簡単だ。

白羽(読み方は、しらは)という更に上を行く変人とのやり取りや、白羽の義妹とのやり取りなどは爆笑もの。

しかし、古倉目線で見れば白羽が変人に見えるが、さらに引いて見ればやっぱり古倉も変人だ。ただ、もっと引いて見ると、向こう側の人間、つまり古倉の同級生や古倉の妹も変人に見える。この目線は、あるいは、より古倉主観で見てもそうだ。

現代の闇を紐解くメッセージ小説である

となってくると、おかしいのは、古倉ではなく世間なのか。

もしかしたらこの作品は、ありもしない「まとも」「常識」といった潮流に流された世間に対するアンチテーゼとも見れる。

例えば、コンビニの仕事よりも、店員のゴシップにかまけているのは、理解できるといえば理解できるが、世間から見れば怠惰である。経営者目線で見れば、そんなことより仕事に集中してくれ、と思うだろう。古倉さんのように、と。

そうすると、少なくともその点においては、古倉のほうがまともなのではないか。

この作品はまるで立方体のように、見る角度を変えると、いかようにも取れるところがおもしろい。

究極の恋愛小説である

または、古倉と白羽の一風変わった恋物語なのか。一風どころじゃないけど。

もしかしたら世の中には、こういったカップル、夫婦もいるのかもしれない。

この表現力にして、どうにも非現実的見えない。とてもリアリティを持って迫ってくるので、すっかりこの世界の住人になってしまう。

そして読者として、この世界のどこに身を置いたらいいのかわからなくなる。

恋愛小説は、「こんな恋がしてみたい」と思う。でも、間違いなくこんな愛の形は嫌だ

かと言って、店員らのように、半ばからかうように、この二人を見るのもいやしい

36歳・独身・処女ということで、その人の人格を全否定し、勝手に心配するような同級生らのようにもなりたくない

AI社会に対する反論である

どこか感情が欠落しているかのように見える古倉は、労働力としてはこの上ない人材だ。

余計なことに目を奪われず、コンビニの仕事と、スタッフらとの調和を最優先する。

これこそが経営者が求める人材であり、究極がAIだ。

しかし、そんなAIのように働く古倉を、世間は変わり者のレッテルを張り、勝手に心配する。本人はそこでその仕事をしているだけで満足なのに。ただそこに存在していたいだけなのに。

人間は無感情のロボットを求めているのか、または感情的なロボットを求めているのか、それともやはり人間を求めているのか。

「人間味」と「社会性」の矛盾

 店長でさえ、仕事を放棄し古倉の恋にかまける。それが普遍的に見えてしまうのは、人間味だ。そりゃ真面目に仕事してるほうが偉いけど、気になるでしょう人間だもの、という。

しかし古倉の正義は、そんなことよりコンビニを機能させることのほうが大事であり、それに支障をきたすようなことを、いかに軽減させれるか、ということだけに奔走する。

社会的に見れば、こちらのほうがとても立派で、古倉自身も自覚しているように、これだけ使い勝手のいいスタッフもそういない。

しかし、古倉の素行は、社会的におかしい人、になる。病気だと言われる。これだけ従順に機能できる人間なんてそういないのに。

社会の歯車になればなるほど、変人扱いされる。しかし白羽のように、社会に反発していても変人扱いされる。

誰が決めたわけでもないのに、みんながそうしていくから、そこに向かっているから、そこに向かっていないものは無条件で変人→病気→心配となる。

その点において、白羽と古倉の思いがわずかに一致するところが実におもしろい。

AIのように従順な古倉は社会から必要とされるが、従順すぎて人間味がなく変人扱いされる。

白羽は口ばかりでなにも動かないので、社会からは必要とされないクズ人間。

そんな両極端にある二人の利害が一致していく。

映画化するなら

古倉恵子役は誰か

この主演は難しい。

ネット上では、満島ひかりとか、深津絵里とか、綾瀬はるかとか言われているけど、違う。色気ありすぎるし、深津絵里だと少し年が上すぎる。

パッと思いついたのは、蒼井優だ。

それでもちょっと美人すぎるか。

思い切り地味な格好をさせればあるいは。

平岩紙がいい」と言っている人がいて、これは見事だと思った。原作者の村田沙耶香氏にもどことなく雰囲気が似てる。

それで言うと、西田尚美がいいのではないかと思った。ただ西田さんも少し年齢がいっているので、黒木華か。

安藤サクラ、江口のりこもある。

白羽役は誰か

「平岩紙がいい」と言っていた人は「アンガールズ田中」を白羽役に推していた。どこの誰か知らないけど、めちゃくちゃ的確だと思う。

白羽は、古倉に対してなんの魅力も感じない、という言葉が嘘に見えないような男でないといけない。田中さん、普通に蒼井優とか襲いそうだもの。

あとはジョイマン高木晋哉か。

俳優で言うと、柄本時生、滝藤賢一…。

ダメだ、アンガールズ田中さん以上の適任が見つからない。でかくて、ガリガリという見た目も、白羽にぴったりだ。

監督は誰か

是枝裕和さんしか考えられない。

ただ、こういったストーリーなので、もしかしたら、宮藤官九郎、タナダユキ、とかでもいいかもしれない。

総合的に、客入りを考えると、

古倉…黒木華
白羽…アンガールズ田中
監督…宮藤官九郎

がベストな布陣ではないか。

泉…平岩紙
店長…星野源

とか、大人計画のバーターを入れて。

とにかくおもしろい作品だった。おかげで寝不足になった。