鷺谷政明の埼玉県外

人と被らない会話の小ネタ

「ボクたちはみんな大人になれなかった」の魅力を全力でネタバレなし解説

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現代文学の完成形。

全てが「今」の文

表現技法から分量から、全てが時代とマッチしてる感じがする。

句読点や段落、時間軸の移り変わりも、とにかく呼吸が現代人ととても合う。

妙な文豪気取りな遠回し表現が出てこないのに、とても純度の高い文学性を感じる不思議。

なんか、すごく「今」っぽい小説だった。

元はcakesでの連載だったそうだけど、一時期のケータイ小説の延長線という文脈になるのかな。ケータイ小説もcakesもよく知らないけど。

この絶妙なバランスは、狙って着地できるところではないので、著者の感性と時代が見事にはまったのではないか。

例えば、又吉直樹作品は、さすが芸人といった笑いの切り口や、テーマに選ぶ題材は見事であるものの、たまに見え隠れする昭和文豪感が強すぎるときがあって、読んでいて少々照れてしまうときがある。

でも本作は、見事に燃え殻氏の確固たる世界観がゆるく確立されていて、読むほどに引き込まれる。

オススメするとイケてる感

いつの時代も、「まだ人が知らないものを先取りしている感」ってめちゃくちゃ強い。結局はみんなそれが欲しいんだなってくらい強い。

だから人は、「遅れてる」と言われないように雑誌に手を伸ばしてきたんだけど、現代はそれがSNSに集約されている。クリック一つで自分のセンスを世に誇示したい。

本作はそんな、まだ人が知らないものを先取りしてる感、いうなれば「先取り欲求」みたいなものを満たしたいと思う全ての人にとって、抜群の存在感を放っている。

あいみょんが推薦しているあたりも然り。

とりあえずモテそう

本作は男であれば共感できそうなストーリーであるものの、あいみょんが推薦してるところを見ると、どうやら女性にも刺さるようである。

燃え殻氏の文には、全てにおいて丸みがある

尖ったことを言っていても、なぜか包み込まれる優しさを感じる。

男であれば、一度一緒に飲みにでも行きたくなるような文体であるし、どうやらそれは女であっても同じのようである。

例えやり逃げされてもいいような、深い愛と優しさを感じるのではないか。

そう考えると、この著者のモテ具合は半端なさそうだから、だんだん腹が立ってきたのでこんな本は絶対に読むな。

だいたいテレビ制作美術としても才能あって、こんなすごい文章書いて、また売れて世間に誉められてふざけるな。

廃刊になればいい。そして燃え殻にでもなればいい。